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ボルダリング故障対策Q&A

2025-06-08
筋損傷にはどのような種類がありますか

運動中の負荷が組織に及ぼす影響はストレイン(strain:外部からの負荷に対する構造の変形)とストレス(stress:ストレインに対する内部の抵抗)として捉えることができる。ストレインを決定する因子は強度、ボリューム、頻度、回数など、ストレス反応とは損傷を受けた組織の炎症反応や変性を引き起こす生体防御反応である。筋の損傷には大きく三つに分類される。

  1. TypeI: 打撲や肉離れとは異なり血管に損傷を伴うことはないが、筋原繊維や周囲の結合組織に微細な損傷を引きおこす (DOMS)。TypeI の損傷は高強度での伸張性筋活動を行った際に生じやすく、組織学的には筋の微細構造の乱れが Z 帯を中心に(場合によっては A 帯に)、一本の筋繊維全体にわたってではなく筋繊維の一部に生じる。現在のところ伸張性運動によって筋損傷が引き起こされるメカニズムは、筋節の過伸展によって引き起こされる可能性(ポッピング筋節説)と筋細胞内膜系を含む興奮収縮連関のどこかに損傷が生じている可能性(筋細胞内カルシウムイオンの恒常性の破綻)が考えられている。筋収縮にカルシウムイオンは必要だが、カルシウム濃度が高くなりすぎると筋細胞自体を壊死させるシステムが働いてしまうことは興味深い。伸張性筋活動では細胞内膜系/細胞骨格の損傷などの一次的損傷、それに伴う炎症反応が二次的損傷として生じる。
  2. TypeII: 筋繊維が数本断裂(1度)、筋周膜の損傷を伴わないより多くの筋繊維の断裂(2度)、筋周膜の部分断裂を伴う多くの筋繊維の断裂(3度)、筋と筋周膜の完全な断裂(4度)による急性の痛みを伴うもの
  3. TypeIII: 筋痙攣など運動中や運動直後に生じる痛みを伴うもの
肩関節のスポーツ障害にはどのような種類がありますか

肩関節は構造上は非常に安定性の悪い関節です。そのため、日常生活では特に支障を来さなくても、投球動作など、肩関節に過度の負担がかかるスポーツでは障害が出てくることがあります。過去に脱臼経験がある場合はもちろんのこと、不適切な筋トレなどで肩の筋力のバランス不良が起こったりしていると、このような障害を来しやすくなります。以下に主要なものを挙げてみます。外傷は主に鎖骨骨折、肩関節脱臼、肩鎖関節脱臼がほとんどです。

ベネット骨棘

ベネット骨棘は、投球による肩の障害の一つとして、肩甲骨関節窩の下方後方よりの部分に骨棘と言って骨の出っ張りが出来ることがあります。これを命名者の名前にちなんでベネット骨棘(ベネット病変)といいます。野球選手の多くに見られ、無症状のこともあるとされます。主に投球時の肩後方の痛みとして症状が出ます。局所に注射することで改善することが多いですが、手術的に切除する場合もあります。

上腕二頭筋長頭腱炎

肩関節上腕二頭筋の長頭腱という腱が肩関節近傍を走行しています。肩関節近くでは結節間溝と言って、骨の溝があり、その間を通っています。そこを抜けると約90度向きを変えて肩甲骨関節窩に向かいます。そのため、骨との間に刺激が生じやすく、炎症を起こすとされています。症状は肩の運動時痛で、主には前方に痛みが生じますが、腱板損傷や SLAP 損傷でも同様の症状を来すことがあり、鑑別が必要です。結節間溝に圧痛があることが多いです。手術治療が必要になることはあまりありません。

関節唇損傷

関節唇とは、関節窩の周りに関節面の縁取りをしているような形の軟骨の一種です。骨頭が脱臼するのを防ぐ役割を持っていると言われています。繰り返しの投球動作で関節に無理な力がかかり、関節がずれようとします。この繰り返しによって関節にゆるみが生じ、関節唇に負担がかかり、損傷していきます。ですから、これは原因ではなく結果であるという見方もあります。亜脱臼などの外傷で生じることもあります。治療は手術的に関節唇を修復することもありますが、結果であることもあるので、肩関節のストレッチや筋力訓練(インナーマッスルと呼ばれる腱板筋群の強化、バランシング)など、不安定性を来す原因を解消することが重要です。主に投球動作による障害です。

腱板炎・腱板断裂

インピンジメント症候群として話題になったことがあります(下記参照)。これは肩関節の安定性が悪いために起こる二次的なものであると考えられています。関節唇損傷と同様、腱板筋群の強化とバランシングが重要です。一旦部分断裂以上の損傷を来した腱板は自然には修復されません。そうなるまでの時期にしっかりと原因を除去し、治療することが大切です。野球などの投球動作を行うスポーツのほか、バレーボールのアタック、テニスのサーブや水泳でも見られることがあります。症状は主に挙上時の痛みです。断裂を起こしてしまった場合、手術治療が必要なことがありますが、スポーツ選手に対する手術成績は必ずしも良いものではありません。予防が大切です。(腱板断裂の項目も参照してください。)

インピンジメント症候群

インピンジとは「衝突する」という意味です。数十年前にアメリカの Neer という人が提唱した概念で、肩の診断治療の大きな進歩を遂げるきっかけとなりました。腱板は上腕骨頭と肩峰という肩甲骨の突起部の間に存在し、肩の挙上時に腱板は肩峰の下面を滑るように動きます。この時、上腕骨頭と肩峰との間で腱板が挟まれるために腱板が損傷され、浮腫、炎症、部分断裂、完全断裂という段階的に病状が進行していくと考えられます。現在ではインピンジメントは原因ではなく結果であるとする見方が主流です。主には慢性疲労や筋力のアンバランスのためにインピンジメントが生じると考えられています。最近ではインターナルインピンジメントや烏口下インピンジメントといった概念も提唱されています。

亜脱臼障害

亜脱臼とは脱臼に至らないが、関節の適合がなくなった状態です。肩関節の場合、元々骨の適合が少ないため、亜脱臼状態ではすぐに整復されることがあります。自分で動かしているうちに整復されることもあれば、脱臼感を感じる暇もなく自然に整復されることもあります。前者は反復性肩関節脱臼の人に時々見られる状態です。また、後方亜脱臼と言って、腕を前に挙げたまま内側にねじるようにすると後方に脱臼するものがあります。これも姿勢を戻せばすぐに整復されます。脱臼感を感じる暇もなく自然整復されると、自覚的には捻挫のような状態なのに、ひどく肩が痛んで腕が上げられない、麻痺したようになるなどの症状が出ることがあります。これを「デッドアーム症候群 (Dead arm syndrome)」と言います。この状態になると関節唇損傷などが起こっていることがあり、痛みが続くなら精密検査が必要です。

デッドアーム症候群(Dead arm syndrome)

これは肩関節が脱臼しそうになったとき(亜脱臼)によく起こるもので、典型的にはダイビングキャッチや「肩をもって行かれた」といった動作の後、痛みやだるさのため肩がうまく挙上できなくなってしまう状態のことです。まるで腕が一本麻痺したかのような状態になるためこのような名前が付けられています。脱臼ほどの痛みはなく、経過観察されることが多いですが、通常、2〜3日もすれば肩の動きは正常に近くなります。しかし、投球などの負荷がかかると痛みが生じ、スポーツ活動に制限を来します。病態は亜脱臼なので、関節唇損傷などを伴っていることもあり、精密検査や場合によっては関節鏡検査が必要になることもあります。2006年12月、全日本フィギュアで安藤美姫選手が肩を傷めておりましたが、あれがまさしくデッドアーム症候群であると考えられます。もともと求心力の崩れている肩関節にスピンでの遠心力がかかったために亜脱臼を生じたものと思われます。

SLAP(スラップ)損傷(上方関節唇・二頭筋長頭腱障害)

これは比較的新しい概念で、1990年代に有名になったものです。関節鏡が普及して初めて確認された概念です。専門的には SLAP の語源は “Superior Labrum lesion Anterior and Posterior” の頭文字を取ってつけられています。訳すと「前方から後方にかけての上方関節唇損傷」という意味です。
上腕二頭筋長頭腱という腱が関節内を走行しており、肩甲骨関節窩の上部の関節唇と付着しています。この部分が投球などのストレスによって引っ張られ、関節唇とともに骨からはがれてしまう病態です。肩の痛みやクリック感が生じます。診断は各種誘発テストや MRI などの画像検査も提唱されていますが、正確な診断は困難なことが多く、関節鏡による確認が必要になることがあります。治療は原則的に関節鏡で行います。切除や修復など、損傷の程度によって治療方針が変わります。

筋肉けいれんにより肉離れが心配です。けいれんの対策を教えてください

過度の努力により引き起こされた筋肉の硬直であれ、筋肉のけいれんであれ、筋肉のけいれんは私たち皆に起こりえます。特に年を取るにつれて頻度は増します。筋肉のけいれんは、無意識におこるリラックスしていない筋肉の収縮ですので、結果として非常な痛みを伴い数秒から15分、もしくはそれ以上持続します。

食事での対策

脱水状態は筋肉のけいれんを起こすので、水分が不足しないようにすることが重要です。少なくとも1.8リットルの水を毎日飲むことを目標にしてください。暑い日やよく運動する場合は、糖分が少ない電解質を補給する飲料を分割して飲むようにしてください。低カリウム状態は筋肉けいれんの原因になります。カリウムの優れた供給源は、バナナ、オレンジジュース、レーズン、サツマイモなどです。

生活習慣での注意点

筋肉けいれんは、よく過努力や反復運動の結果起こります。新しい運動を行うときや慣れない動作をするときには、ストレッチなどで事前にしっかりと筋肉を伸ばしましょう。これらのダメージから守る方法の一つは、どのような運動の前にも体を温めることです。運動前には10分間のウォーキングを行ってください。運動を終えたら、後から筋肉がけいれんを起こさないように優しくストレッチすることも大切です。

筋肉のけいれんに効果のあるサプリメント

アルニカ

アルニカは、筋肉痛と筋肉のけいれんのためのポピュラーなホメオパシー治療薬です。ノルウェーの86人のマラソン選手を対象にした研究では、レース前にアルニカを含んでいるホメオパシー治療薬を使用した人たちは、レース終了後にプラセボを摂っている人たちよりも筋肉痛が軽かったことが示されました。典型的な服用量: 30X に希釈したアルニカを含んでいるホメオパシー治療薬を用いてください。症状がある部分にアルニカクリームやジェルを塗り込み、マッサージしてください。ただし、肌に傷があるときは使用しないでください。

クレアチン

クレアチンは、筋肉に必要なエネルギーを与える体内で作られたアミノ酸です。臨床試験では、クレアチンは頻繁に筋肉のけいれんに悩まされている患者のけいれんのおよそ60%を軽減しました。他の臨床試験では、クレアチンサプリメントがプロのフットボール選手の筋肉のけいれんの頻度を大幅に軽減したことが示されています。典型的な服用量: 急性の筋肉けいれんのために1日あたり5g を4回、頻繁に起こる筋肉けいれんのためには1日あたり2g を摂取します。

マグネシウム

マグネシウムは、酸素の吸収、エネルギー生産、電解質のバランスを整えるなど、筋肉の機能に影響を及ぼす多くのプロセスに関与しています。体内に十分なマグネシウムを保持することは、筋肉が適切に働くための神経末端を助けます。典型的な服用量: 1日あたり400mg。

亜鉛

亜鉛は、夜間の筋肉けいれんに悩まされる人に不足しがちな栄養素です。研究では、亜鉛サプリメントが12人中10人の患者のけいれんを軽減し、そのうちの7人は完全に改善したことが示されました。典型的な服用量: 1日あたり15mg。

HMBがボルダリングに適したサプリである理由を教えてください

-----IRONMAN(アイアンマン)2012年1月12日発売号より引用----

HMBは正式名称を β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸 といい、アミノ酸の一種であるロイシンを摂取することにより体内で生合成されます。体内で生合成されない9種類の必須アミノ酸の中でバリン、ロイシン、イソロイシンを BCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼びます。BCAAは骨格筋で主に代謝されエネルギー源になる必須アミノ酸で、また筋タンパク質中に多く含まれていることから近年注目を集めています。なかでも注目されているのがロイシンです。ロイシンは体内で HMB に代謝されます。しかしながら、HMB 1g を体内で生合成するには約20gものロイシンが必要となりますので、HMB そのものを摂取する方が効率的だと考えられます。日本に先立ちアメリカでは以前からアスリートが HMB を使っていますが、日本では2010年にようやく食品として販売されるようになりました。HMB はトレーニング後の筋肉の異化(分解)を抑え、回復を促すことで、アスリートの筋力アップとカラダ作りをサポートします。「HMB」は体内に存在する物質ですが、1g を作るには約20gのロイシンが必要とされ、食品にもごくわずかしか含まれないため、補給にはサプリメントでの摂取が必須となります。一般的に加齢とともに体脂肪は増加し、また筋量は減少の一途をたどります。50歳からは毎年1%ずつ筋量が減少すると言われています。これを抑制するのがウェイトトレーニングですが、実際、完全に抑制することは難しく、短距離選手や高強度ウェイトトレーニーであっても加齢とともに筋繊維は細くなるという研究結果があります。しかし科学の発達とともに、それを少しでも抑制する方法が考えられています。HMB もまたそうした目的のための人気サプリメントの一つです。

ロイシンの重要性

ロイシンは BCAA の一つであり、筋同化のための重要なアミノ酸です。単独でも筋発達の反応を起こすことができ、その威力はロイシン以外の19種類のアミノ酸を合わせたときに匹敵することがわかっています。このことから科学者たちはロイシンの強力な筋肥大作用に着目し、筋量減少を食い止められないかと研究を始めました。その結果、加齢によって「ロイシンへの耐性」ができることがわかりました。つまり高齢者がタンパク質を5〜10g程度の少量摂取したとしても、そこから得られる程度のロイシンでは『ロイシンによる筋肥大反応』を十分に得ることはできないのです。では大量にロイシンを摂取した場合、たとえば高品質のタンパク質30〜40gを摂取し、そこからロイシン3g前後を供給すればどうなるか。50歳以上の被験者の実験で、これだけ大量のロイシンを摂取すれば若い人と同様に顕著な筋肥大が得られることがわかりました。

HMB変換後に本領発揮

どうしてロイシンは特別なアミノ酸なのでしょうか。ロイシンは体内でヒドロキシ-β-メチルブチレート (HMB) と呼ばれる物質に代謝されます。ここで HMB への変換を妨げる実験が行われると、本来得られるはずのアナボリック反応や抗カタボリック反応が遮断されてしまいました。つまりロイシンは HMB に変換されて効果を発揮するのです。HMB の実験として、トレーニングの有無によって異なる結果の研究があります。すなわち、トレーニングを行う人で効果が高いというものと、トレーニングを行っている人でも効果が高い人と低い人がいるというものです。
その結果の違いを考察しある結論が導かれました。それは、HMB の効果はトレーニング内容が高強度かつハイボリュームである場合に高いということです。また、HMB の実験ではカロリー制限下での筋量減少にブレーキをかける効果も確認されています。

まとめると HMB の効果が高いのは

  • 摂取カロリーを制限している減量中
  • 高強度&ハイボリュームのワークアウトで筋繊維が過度のダメージを受けている

もちろん加齢によって筋量は減少するため、その歯止めにも役立つと考えられます。

HMBがもたらす効果

HMB と高齢者の実験として12週間のHMB摂取が行われました。その結果、筋力も筋サイズも12週間で向上したという報告があります。最近の実験では、ベア博士が12ヶ月にわたってHMB摂取を行ったところ、被験者の筋量は1年で確実に増加したそうです。
HMB の理論についてはいくつか提案がありますが、中でも支持されているのは「HMB は筋肉の細胞膜を形成する材料を供給している」というものです。加齢によって筋量が減少するのは細胞膜が過度に変性してしまうためだと考えられており、健康な細胞膜形成に必要な材料が供給されれば細胞膜の変性は抑制され、結果的にサイズダウンは防止されると考えられます。HMB は細胞膜の材料となるため、筋繊維が過度に傷ついた場合でも HMB は修復を促進し、その効果を発揮すると考えられます。また加齢とともに筋肉の同化速度が抑制され、筋タンパクが分解される傾向にあります。HMB の摂取は高齢者でもそれらにブレーキをかけることができます。

HMBの効果を引き出す摂取方法

若い人ならば1日3g程度の HMB で十分ですが、中高年〜高齢者の場合はもう少し必要となります。具体的な量が明らかになるまでは3g程度を摂取しながら様子を見てください。ちなみに HMB 摂取に最も適した時間帯はワークアウト後よりもワークアウト前であるという結果が得られています。ワークアウト前に HMB を摂取することで、筋肉のダメージを示す物質の濃度上昇が抑制されました。推奨摂取量と時間帯は以下の通りです。

  • 朝食時に 1g
  • 夕食時に 1g
  • ワークアウト前に 1〜2g

効果で言うなら HMB > ロイシン > BCAA という認識があります。ただし価格もその順番のため、一概にどれが最良とは言い難いです。個人的にはロイシンと BCAA の併用が無難だと考えています。BCAA 自体もかなり高価なため、セールを狙うかロイシンのみの利用もコストを考えれば選択肢となるでしょう。

なぜアイシングは治癒を遅らせるのか

RICE を発表したドクター自身が、RICE の間違いを指摘し、アイシング障害に関する論文を発表しています。ロクスノ68 の記事を依頼された際、「さらに上を目指す」の中で書ききれなかった内容をまとめています。アイシングや RICE による障害で悩む人や選手を減らすことが目的です。プラグマティズムに則り、理論に基づき正しく行動したいという意図があります。
※プラグマティズム:行動を人生の中心に据え、思考・観念・信念は行動を指導すると同時に、逆に行動によって改造されるものであるとする思想。

治癒を促進したというエビデンスがほとんど存在しない

ベストセラーとなった著書『Sportsmedicine Book』を書いた時、私は運動競技における怪我の処置に対して RICE(Rest: 安静, Ice: 冷却, Compression: 圧縮, Elevation: 挙上)と名付けました。損傷した組織から引き起こされる痛みを和らげるために、アイシング(Ice)は怪我や筋肉痛の標準的な治療法となってきました。以来数十年にわたりコーチたちは私が作成した RICE ガイドラインを使用してきましたが、どうやら Ice および完全な Rest は、治癒を助けるどころか遅らせるかもしれないということがわかってきています。
最近の調査では、運動選手は非常に激しい練習を課されており、広範囲に及ぶ筋肉痛からなる深刻な筋肉ダメージを発症しています。アイシングによって腫れを遅らせることはできても、アイシングが筋肉損傷からの治癒を早めることはありません(The American Journal of Sports Medicine, June 2013)。22件の科学論文を要約すると、アイシング(Ice)と圧迫(Compression)の組み合わせが、圧迫を単独で使用した場合よりも治癒を促進したというエビデンスはほとんど存在しないことがわかります。ただし、アイシングに加えた運動が足首の捻挫の治癒にわずかに役立つ可能性はあるようです(The American Journal of Sports Medicine, January 2004;32(1):251-261)。

治癒には炎症が必要

非常に激しい練習による外傷や筋肉痛によって組織に損傷を与えたとき、体は自己の免疫系を用いてそれを治癒しますが、それは病原菌を殺すのに用いるのと同じ生物学的なメカニズムであり、これを「炎症」と呼びます。病原菌が体内に侵入した際、免疫系はその病原菌を殺すために、感染した場所に細胞とタンパク質を送り込みます。筋肉やその他の組織が損傷を受けた際にも同様に、治癒を促進するために免疫系は損傷組織に対して炎症細胞を送り込みます。感染と組織損傷の両者に対する反応は同じであるということです。炎症細胞は治癒を促進するために損傷組織に駆けつけます(Journal of American Academy of Orthopedic Surgeons, Vol 7, No 5, 1999)。IGF-1(Insulin-like Growth Factor)と呼ばれるホルモンから損傷組織に対して分泌されるマクロファージと呼ばれる炎症細胞は、筋肉やそれ以外の受傷部分を治癒するのに役立ちます。しかしながら、腫れを軽減するためにアイシングを行うことは、実際には IGF-1 の分泌を妨げることで治癒を遅らせることになります。
ある研究では、2つの実験用マウスのグループを使用しました。1つのグループは遺伝子操作されており、怪我に対して通常望ましい炎症反応を生じることができません。もう一方のグループは正常に炎症反応を生じることができました。科学者たちは筋肉に損傷を与えるために塩化バリウムを注入しました。望ましい免疫反応を起こせないマウスの筋肉は回復せず、一方で正常に炎症反応を起こせるマウスは速やかに回復しました。回復したマウスには損傷した筋肉部分に大量の IGF-1 が確認されましたが、回復しなかったマウスにはほとんど IGF-1 が見つかりませんでした(Federation of American Societies for Experimental Biology, November 2010)。

損傷組織に対してアイシングを行うことは、損傷箇所付近の血管を収縮させ、治癒に必要な炎症細胞を届ける血流を遮断することになります(Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc, published online Feb 23, 2014)。アイシング後、数時間が経過しても血管は再び拡張しません。この血流の減少は組織の壊死を招く可能性があり、永久的な神経の損傷を引き起こす場合もあります。

炎症を抑えるあらゆる行為は治癒をも遅らせる

免疫反応を抑えるあらゆる行為は、同時に筋肉の治癒をも遅らせます。以下に挙げるものはすべて治癒を遅らせる可能性があります。

コーチゾンを含む薬品
  • イブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)を含む鎮痛剤
  • 関節炎や癌、乾癬などの治療によく使われる免疫抑制剤
  • コールドパックやアイシング
  • 怪我に対して免疫反応をブロックするあらゆるもの

アイシングは強度、スピード、耐久力、協調性を減少させる

アイシングは、怪我をした運動選手が試合に戻るための短期的処置として頻繁に使われてきました。アイシングは痛みを軽減するのに役立つかもしれませんが、運動選手の強度、スピード、耐久力、協調性を妨げることになります(Sports Med, Nov 28, 2011)。この論文では、アイシングの影響について調べた35件の研究を取り上げています。ほとんどの研究では20分以上のアイシングを行い、その結果アイシング直後に強度、スピード、パワー、敏捷性、ランニング能力に減少が見られたと報告されています。腫れを抑えるためにアイシングを行った場合は(最大でも5分以内)、その後すぐに十分に温めることを推奨します。

推奨する怪我の対処法

怪我をしたら即座に練習を中止してください。痛みが強く動かせない場合や、意識が混乱している、瞬間的でも意識を失った場合は緊急の医療手当てが必要かどうか検査を受けてください。開放創であれば傷口を清潔に保ち、医療機関で検査を受けてください。可能であれば、重力を利用して腫れを最小限に抑えるため、傷害部分を挙上するようにしてください。スポーツ傷害の専門家は骨折がないか、動かすことで損傷が悪化しないかを判断します。筋肉もしくはその他の軟組織に限られた怪我であれば、医師やトレーナー、コーチは圧迫包帯で巻いてもかまいません。アイシングは怪我の痛みを和らげるため、受傷後すぐに短時間であれば適用してもよいでしょう。ただしアイシングは最大でも10分にとどめ、その後は20分休憩し、さらに 1〜2 回 10 分間のアイシングを行います。受傷から6時間以上が経過した後にアイシングを行う理由はほとんどありません。怪我が深刻な場合は医師の指示に従ってリハビリを行ってください。軽度の怪我であれば、通常は翌日にはリハビリを開始できます。その動作によって痛みや不快感がなければ、怪我をした部分を動かして使用して構いません。痛みを感じずに動かせるのであれば、すぐに運動を再開してください。

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