ビレイグラス
専門店が教える!失敗しない選び方
先に結論:ビレイグラスは“首の安全装置”。ただし万能ではない
30年以上ロープクライミングと現場運営を続けてきた結論はシンプルです。ビレイグラス(ビレイ用メガネ)は、頸部の常時伸展をほぼゼロにし、集中力のドリフト(注意の揺らぎ)を抑える「エルゴノミクス装置」です。一方で、視野の一部がプリズムに占有されるため、足元・クリップ位置・周囲の人流を見落とす“構造的リスク”も同時に持ちます。道具は、使い方で薬にも毒にもなる。これが前提です。
- 期待できる効果:頸部伸展角を概ね30–60°低減、首コリ・頭痛のリスク低減、上部確認までの視線移動時間を短縮
- 残る課題:足元や周辺視の死角、慣れないうちは距離感の誤差、屋外の強い反射・逆光での視認性低下
- 結論:正しい選定+プロトコル運用でメリットが明確に上回る
首が痛くなる理由:幾何で読む「見上げ角」
必要な見上げ角は、壁高と距離でほぼ決まります(近似)。
必要視線角 ≒ arctan((クライマーの高さ − 目の高さ) / 壁からの距離)
人は眼球だけで上に約25°までカバーできるので、それ以上は首(頭部伸展)が必要です。ビレイグラスは視線を約60°上に「曲げる」ので、首の伸展がほぼ不要になります。
モデルケース(屋内8 m、目の高さ1.6 m):
- 距離2.5 m・クライマー高8 m → 視線角 約68° → 眼球25°を引くと首は約43°必要
- ビレイグラス(偏向約60°)使用 → 首の必要角 約0°(中立〜軽微)
注:幾何モデルによる目安。実際の見上げ角はルート傾斜・クリップ位置・個人差で変わります。
ビレイグラスの仕組み:プリズムが60°前後、視線を「折る」
- 光学:反射プリズム(多くはBK7等の光学ガラス)。像は正立で上下左右の反転はありません。
- 偏向角:概ね60°前後。これにより頭部をほぼ中立に保ったまま上部を確認可能。
- 視野:プリズム越しの有効視野は水平20–30°、垂直10–20°が目安。外周は素通し視野。
- コーティング:反射・散乱を抑えるマルチコート有り無しでコントラストが変わります。
- 素材と透明度:ガラスはクリアだが重量↑。樹脂は軽いが微細な歪みが出やすいモデルも。
失敗しない選び方(現場で効く7ポイント)
- 視野と死角:プリズム窓が大きすぎると周辺視が削られます。ほどよい“窓”が吉。
- 重量と鼻パッド:30–45 gがボリュームゾーン。鼻パッド可動かつ広い接地面が快適。
- 眼鏡・度付き対応:度付きの上から掛ける場合は「クリップオン」か「深めのブリッジ」を選択。
- コーティング:アンチリフレクション(AR)とハードコートは実用上の差が出ます。
- ケースと携行性:ハードケース必須。プリズムは点荷重に弱い。
- フレーム形状:ヘルメット干渉が少ない薄めのテンプルが◎。
- 保証と交換部品:鼻パッド単体交換可か、紛失時の部品供給があるか。
注:代表値(市場に流通するモデルの一般的なレンジ)。実重量はモデルにより異なります。
安全運用プロトコル(ジム現場の現実解)
- 停止時専用:歩きながらは使わない。移動時は外す or プリズム越し視認を止める。
- スキャン比率:上:下:周囲=3:1:1を目安に、周期的に足元・ビレイループ・周囲を確認。
- ロワーダウン時:プリズム越しではなく直視でロープと着地帯を確認。
- 初回慣らし:トップロープで10分、次に短いリードで。遠近感への違和感を解消。
- 合図の取り決め:声・コマンドを明確に。プリズム視は口頭ミスを拾いにくい。
- 子ども・初心者相手:周辺視を多用するため、慣れるまで使用を控えるのも選択肢。
モデルタイプ別の傾向(海外含む)
- クラシック(メタルフレーム):視界クリア、堅牢。重量はやや重。鼻パッドで微調整しやすい。
- ライト(樹脂フレーム):軽量で長時間快適。微小な歪みやコーティング耐久は要確認。
- クリップオン:度付き眼鏡に装着可。軽量だが固定力・位置決めの精度はモデル差大。
- 視野拡張型(側窓あり):周辺視を少し確保。プリズムの光漏れ・反射の質はモデル依存。
代表ブランド例:Y&Y、Belay Specs、Metoliusなど(在庫・取扱は時期で変わります)。
屋外ルート(マルチピッチ/トラッド)での使い方
- 強い日射と反射:偏光サングラス上に重ねる場合は、クリアランスと反射対策をチェック。
- ビレイ位置の傾斜:足場が不均一だと距離感が狂いやすい。最初は短いピッチで。
- 上部ビレイ(セカンド引き上げ):必要性は薄い。周辺監視を優先して使わない判断も正解。
コスト・耐久・メンテナンス
- 価格帯の目安:エントリー 3,000–6,000円/ミドル 7,000–12,000円/ハイエンド 13,000円〜
- ライフ:週2運用で1–3年が目安(パッド・ネジのメンテ次第)。
- 手入れ:ブロワー→マイクロファイバー→中性洗剤の順。乾拭きは微傷の元。
- 破損リスク:テンプル付け根・プリズム角。ケース保管と点荷重回避で寿命が伸びる。
よくある誤解と答え
- 「像が逆さになる?」→ ならない。正立像です。
- 「集中力が落ちる?」→ 正しく使えばむしろ上部確認が楽になり余裕が生まれる。下方向の定期スキャンは必須。
- 「度付きには使えない?」→ クリップオン型や深いブリッジ形状なら併用可。
- 「ボルダリングでも要る?」→ 基本不要。ロープワークのビレイに特化した道具。
グッぼるの提案:試し掛け→試登→購入まで一気通貫
私たちはジム・ショップ・カフェが一体。だから「試し掛けで終わらない」検証ができます。店頭で掛け心地を合わせ、トップロープで視認チェック、カフェで休憩しながら最適解を詰める。VIBE重視で、数字も出します。
- 掛け心地チェック(5分):鼻パッド調整、ヘルメット併用確認
- 視認テスト(10分):トップロープで足元→クリップ→上部の視線遷移を実地で確認
- 用途別レコメンド:屋内リード中心/屋外トラッド中心 など運用前提で最適モデルを提案
在庫や取寄せ可否はLINEで即回答。シューズ120モデルの接客ノウハウを、グラス選びにも転用しています。
まとめ:異端でいい、合理で選ぶ
首を捧げる時代は終わり。ビレイグラスは、あなたの注意資源を「登る人」に再配分するデバイスです。ただし、運用がすべて。道具に丸投げせず、プロトコルで縛る。これが私たちの現場解です。グッぼるは、試し掛け・試登・カフェでのフィードバックまで、こだわりを持って伴走します。
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