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「昔のミウラは1万円台だった」25年の価格変化から、今のクライミングシューズ選びを楽しむ
店頭でベテランクライマーの買い替え相談をしていると、よく出る言葉があります。
「昔のミウラは1万円台だったのに」
当時を知る人なら、今の値札に驚くのは自然なことです。でも売場を見渡すと、値段だけでなく、得意な動きや足型に合わせた選択肢も大きく増えました。25年の変化をたどると、昔を懐かしむだけでは見えない「今だからできる選び方」が見えてきます。
一足の値札を物価、為替、輸入条件、そして壁の変化に分けると、
自分に合う一足を、もっと納得して選べるようになります。
この記事では、2000年ごろの約1万6,000円という店頭記憶を出発点に、2026年の掲載価格、公的な物価・為替データ、シューズ設計の変化を重ねます。数字の背景を整理しながら、次に登りたい課題を思い浮かべて、今の一足を気持ちよく選ぶための記事です。
「昔のミウラは1万円台だった」——25年の変化を知ると、今の選択肢が見えてくる
当時を知る人の記憶は、間違いとは言い切れません。ただし、記憶の中の1万6,000円と、現在の3万円前後を、そのまま横に並べるのも公平ではありません。まずは物価を同じ物差しにそろえます。
総務省の総合消費者物価指数は、2000年が97.3、2025年が111.9です。単純に物価だけで換算すると、2000年の1万6,000円は2025年の約1万8,400円に相当します。上昇率は約15%です。
つまり、国内の一般物価だけでは差の全部を説明できません。
| 2026年7月の掲載例 | 価格 | 設計上の位置づけ |
|---|---|---|
| MadRock Remora Pro HV / LV | 22,000円 | ソフト系ハイパフォーマンス |
| La Sportiva Skwama Lite | 25,300円 | 素材と価格を見直した新設計 |
| La Sportiva Miura VS Reboot | 28,600円 | 支持力とエッジングを更新した定番 |
| La Sportiva Mandala | 31,900円 | No-Edgeの高感度モデル |
| La Sportiva Ondra Comp | 38,500円 | コンペ動作に特化した上限帯 |
ここで安心したいのは、「今は3万円台後半が標準」ではないことです。3万8,500円は上限側で、2万円台にも競技・高性能モデルがあります。予算と役割を分けて見れば、今も選べる幅はしっかりあります。
1万6,000円は物価換算で約1万8,400円。数字を分けると値札が読みやすくなる
物価だけでは説明できない差の続きを、ドル円、ユーロ円、国内物価に分けて見てみましょう。数字を一つずつほどくと、今の値札が少し読みやすくなります。
旧原稿では2008〜2012年を「75円〜90円」としていました。75円台をつけた場面はありましたが、2011年のドル円の年平均は約79.7円です。ニュースで見た一日の数字と、店が一年を通して仕入れるときの環境は同じではありません。
年平均で比べると、ドル円は2000年の107.8円から2025年の149.6円へ、約39%の円安です。さらに2026年7月24日17時の日本銀行の中心相場は163.77円でした。2000年平均と比べると、約52%の円安です。
ただし、La SportivaやSCARPAのような欧州ブランドを考えるとき、ドル円だけでは足りません。ユーロ円は2025年平均169.04円、2026年6月平均185.11円。わずか半年ほどの比較でも約9.5%円安方向に動いています。
ニュースの為替と、売場の値札には時間差がある
輸入価格には、ブランドや代理店の価格改定、発注時期、決済通貨、輸送費、国内での保管・販売コストなどが重なります。為替が10%動いたから、翌日に店頭価格も10%上がる、という単純な関係ではありません。一足の値札には、注文した時期と、その在庫が日本へ届くまでの時間も含まれています。
逆にいえば、為替が落ち着いても、すぐに昔の価格へ戻るとは限りません。すでに発注した在庫や、新しい希望小売価格、モデルそのものの原価構成があるからです。
一つの理由に決めず、この4つに分けると、目の前の一足を落ち着いて比べられます。
25年で増えたのは、登り方に合わせて選べるシューズの「仕事」だった
新しいシューズを見る楽しさは、単に「性能が上がった」と比べることではありません。見るべきなのは、その靴がどんな動きを手伝ってくれるかです。
25年前の代表的な高性能シューズでは、細かいエッジに立つための支持力が大きな価値でした。現在はそこに、強傾斜でのかき込み、スメア、トゥフック、ヒールフック、ボリュームへの追従、コンペ特有の走る・跳ぶ動作まで加わっています。
たとえばLa SportivaのMandalaは、エッジをなくして接触面と感度を高めるNo-Edge構造と、ダウントゥ形状を保つP3システムを組み合わせています。SCARPAのDragoは、足裏との距離を減らすPCB-Tensionと、前足部を軟らかいラバーで包むSRTを採用しています。
現在のシューズで増えたのは、単純な性能の序列ではなく、次のような設計の選択肢です。
- ソールの分割と厚み:支持力を残すか、曲がりやすさを優先するか
- テンション構造:つま先へ力を集めながら、形状を保てるか
- トゥ・ヒールのラバー:フックの範囲、密着、感度をどう作るか
- 足型の細分化:LV/HV、踵の深さ、甲の高さ、左右差へどう合わせるか
- 用途の細分化:岩、ジム、コンペ、垂壁、強傾斜のどこを得意にするか
一方で、「新しい靴なら昔の靴より必ず登れる」という意味ではありません。硬い靴が必要な課題もあれば、薄く軟らかい靴が必要な課題もあります。Miura系が今も残っているのは、エッジングと支持力という仕事が、今の壁でも消えていないからです。
25年で変わったのは、全員が同じ「最高性能」を目指す時代から、登り方に合わせて役割を選べる時代へ移ったことです。価格を比べるなら、まず同じ仕事をする靴同士で比べる。自分の登りに必要な役割が見えると、履き比べる時間もぐっと面白くなります。
次に登りたい課題を決めると、3万円の一足も選びやすくなる
売場で楽しいのは、次に登りたい課題を思い浮かべながら履き比べる時間です。高いから良い、安いから妥協、と決めず、まず次の一足に手伝ってほしい動きを一つに絞ります。
- 使う場所:岩が中心か、ジムか、コンペか
- 必要な仕事:小さい足に立ちたいか、スメアしたいか、フックを安定させたいか
- 足型:幅、甲、踵、左右差、LV/HVのどれが合うか
- 使い切り方:週何回使うか、ローテーションするか、リソールするか
価格差を「一回あたり」に直すと、感情と判断を分けやすい
たとえば2万2,000円と2万8,600円の差は6,600円です。80回使うなら、一回あたりの差は約83円。寿命は使い方で変わるため保証できる数字ではありませんが、目の前の差額を「使い切る時間」に置き直すと、自分に必要かどうかを考えやすくなります。
反対に、月に数回しか使わない、まだ得意な動きが定まっていない、レンタルから初めて買う段階なら、最上位モデルを選ぶ必要はありません。今の課題に十分な一足を選び、登りながら次の基準を作るほうが実践的です。
大人の買い物の面白さは、高い物や最安品を選ぶことではありません。「この一足で、次はあの課題を登りたい」と自分の言葉で話せることです。
よくある質問
Q. これからも価格は上がりますか?
為替やブランドの改定次第なので断言はできません。2026年7月時点は円安が強いものの、価格の先読みだけで買うより、必要時期と現行在庫を確認するほうが確実です。
Q. 3万円台の靴なら上達が早いですか?
価格より、足型と課題への適合が先です。合わない高級モデルより、役割が合う2万円台のモデルのほうが登りやすいことは普通にあります。
Q. 昔の硬い靴は、もう時代遅れですか?
いいえ。小さいエッジに立つ、長いルートで支持を得るなど、硬さが助けになる場面は今もあります。選択肢が増えたのであって、過去の役割が消えたわけではありません。
「次に登りたい課題」から、楽しく履き比べましょう
気になるモデルと、挑戦したい動きを教えてください。グッぼるでは、価格帯・足型・用途を並べ、長く頼れる一足を一緒に探します。
クライミングシューズを比較する25年で変わったのは、値札だけではありません。為替も、物価も、壁も、足に任せる仕事も変わり、選べる一足は豊かになりました。次に登りたい課題、足型、使用頻度を先に決めれば、価格は「高いか安いか」だけではなく、楽しく選ぶための材料になります。
データ・参考資料
- Federal Reserve Board / FRED「Japanese Yen to U.S. Dollar Spot Exchange Rate(年平均)」
- 日本銀行「外国為替市況(2026年7月24日)」
- OeNB / ECB「ECB reference rates」
- 総務省統計局「2025年平均 消費者物価指数」
- 労働政策研究・研修機構「消費者物価指数 1947〜2025年」
- La Sportiva「Mandala / No-Edge / P3 System」
- SCARPA「Drago / PCB-Tension / SRT」
- グッぼる「La Sportiva 現行掲載価格」
- グッぼる「クライミングシューズ 現行掲載価格」
主要データ確認日:2026年7月24日。グッぼる掲載価格と本文は2026年8月1日に再確認。2000年ごろの販売価格は、ユーザー提供原稿と店頭記憶をもとにした目安であり、公的な連続価格統計ではありません。総務省は2026年8月7日にCPIの2025年基準への改定結果を公表予定のため、公開後に数値表記を再確認します。
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