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Unhidden Heart 5段-/V14 困難への挑戦

村口2019/11/29

武庫川ボルダーとの出会い

今から10年前の2009年。兵庫県にある武庫川で初めてその岩を目の当たりにしました。恐らく人生2回目の岩場だったと思います。通っていたジムの常連さんに案内してもらい、廃線アプローチを30分程進んだ先にとても存在感のある大きなボルダーがありました。その時は当時プロジェクトだったこのラインがある事すら気づきませんでしたが、その岩のスケールに圧倒されたのをよく覚えています。

ファンキーモンキールーフ 初段

初めて訪れた時の目標はファンキーモンキールーフ(初段)。その岩場に連れて行ってくれた方の目標でもあった課題です。大きなルーフをガバとスローパを繋ぎ、少し横にトラバースをして岩のど真ん中を抜けていく好課題。手数の長さと遠いガストンが最大の核心でした。10年経った今でも鮮明にムーブが思い出せる程、思い出深い課題です。この時はムーブすら出来ず、その後4日間のトライでこの課題を完登しました。記念すべき初の初段です。

冷酷 4段-

初の初段を登って舞い上がっていた僕は、ファンキーの隣りにある、当時、武庫川最難課題である冷酷(4段)に心を奪われました。岩場のど真ん中を直上するライン。直ぐにトライを開始するも、離陸出来ただけで1手も出さなかったのを覚えています。改めて振り返ると、当時の実力でよくトライする気になったなと思います。初段を登ったばかり、しかも1本だけ登れただけの僕が登れるはずも無いほど難しい課題。しかし出来ないムーブをコツコツ積み上げて出来るようになる過程が楽しかったのか、ここから2年間かけて完登に至りました。この時はひたすらにガムシャラで、この課題のことばかり考え、トレーニングを重ね、長いアプローチが嫌になるほど通ったを覚えています。この時に費やした時間が今の自分のクライミングを支えていると今なら分かります。

Unhidden Heart 5段-

冷酷を登ってから8年間。その間積み上げてきたクライミングにより、ようやく5段を登れる実力がついてきたと感じました。若い時程ガムシャラにトライや登る事はしなくなりましたが、だからこそ効率よくトレーニングやケアの知識を深め、今の自分を作っていけたように思います。グッぼるでの密度の濃い4年間で店長やオーナー、同僚やグッぼるサポートのトップクライマー達に刺激を与えてもらえたのが大きかったと考えています。

そんな時にふと、思い出深い岩場で中嶋徹さんが5段を初登したと耳にしました。その課題の名前は「Unhidden Heart」そのラインは武庫川でも有名なプロジェクトでドリーム課題となっていたルートです。冷酷を登った際に一度、登る事が可能なのか確認しましたが、当時の僕ではとてもムーブがこなせるようには思えず、忘れかけていたラインでした。あの課題が登られたと聞いて、すぐに行ってみたいと思いました。

グッぼるサポートの日比野良祐君と梅雨の合間をぬって久しぶりの武庫川へ。夢のラインと改めて対峙した時、今なら自分なら登れると確信しました。しかし、梅雨で岩の状態も悪く満足にトライする事が出来なかった為、岩の状態が良くなる秋が勝負だと考え、それまではカラダをしっかり作り上げることに専念しました。

そして2019年10月7日。「Unhidden Heart 5段-/V14」完登。とにかく自分の限界を超えたクライミングが出来た事が嬉しく、それを若かりし頃、当時の仲間たちと通ったこの思い出深い岩場でそれが叶えられた事も感慨深いものがありました。クライミング人生の目標と定めていた挑戦に成功し、今までのクライミングが報われたような気がしました。暖かく見守ってくれた皆様に本当に感謝しております。

5段というグレードについて

「クライミングはグレードではない」とよく言われます。確かにその通りです。しかしクライミングが未知や困難に対する挑戦である以上、そのグレードやスタイルは非常に重要であるように僕は思います。

岩で成果を出し記録を認めてもらうことこそがクライミングの文化の基礎となり、今までもこれからもそうやっていく事こそが重要だと思います。他人と比べる為ではなく、常に最高の自分を追求するためのトライをする事。その為にこそグレードがあるべきモノだと考えています。その中でクライミング界で困難とされる5段クライマーになる事を自分の人生目標にしました。それが運良く叶えられました。次に待っているのはさらなる挑戦。さて次はどんなクライミングをしようかと思案中。これからもさらなる高みを目指して頑張ります。

村口2019/11/29

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